相続対策は、多くの財産を所有している人や高齢の人だけが行うものと考えてはいませんか?相続対策と聞くと、相続税を軽減させたり、遺産分割での争いを避けたりするためとイメージしがちですが、基本的には「相続人が手続きに困らないようにしておく対策全般」を指すものと考えるべきです。
このように考えれば、財産の多少や年齢にかかわらず、誰もが検討したほうが良いことが理解できると思います。本記事では、相続で考えておきたいことや、相続対策の基本と方法について解説します。
相続対策の進め方
相続財産の現状把握・分析
何でもそうですが、現状を正確に把握し、認識することが大切です。相続の場合も、どのような相
続財産がどの位あるかを漠然としてではなく、正確に把握し、出来れば財産目録を作るべきです。 そして次に、相続税がかかるのかどうかの判断です。相続税がかかるかどうかの判断は、おおまかに相続税の基礎控除額を上回るかどうかです。相続税がかかるのか、かからないのかによって相続対策も変わっ来るからです。
相続人が誰になるのか把握
次に誰と誰が相続することになるのかを明確に知る必要があります。これはあまり難しいことではありません。通常は、配偶者と子供たちです。
民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意が出来なかったときの遺産の持分の目安であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。
家族の様々な状況からみて将来の家族がお互いに仲良く暮らせるような最適な相続割合を想定し、普段からの家族との話し合いの中で、自らの思いを伝え、家族が理解していれば大きな争族問題にはならないでしょう。
相続トラブル防止対策
テレビドラマのように、財産が何億とかの場合のトラブルは少なくて、むしろ財産額が1000万円以下とか5000円万以下というケースの方がトラブルが起きやすいようです。裁判所に持ち込まれる件数も約8割が5000万円以下ということが統計的にも明らかになっています。
遺言の活用が有効な手立てとなる場合があります。もめない相続の形を予め作っておくことが大事です。家族内で日頃から話し合っておくなど、財産を残す人は、後々家族がより円満で仲良く幸せに暮らせるようにバランスをとって考えることが大切です。
認知症対策
2025年には、5人に一人は認知症になるとの予測があります。認知症になるとどのようなことにな るか。相続対策が全くできなくなります。例えば不動産の売買が出来なくなる、生命保険に加入で きない、遺言書の作成が出来ないなど積極的に対策を行うことが出来なくなります。
認知症対策として、成年後見制度がありますが、積極的に相続対策として財産を有効かつ柔軟 に活用するという前提に立っていないので、現実には使いにくいという側面があります。
現在脚光をあびているのが、家族信託制度です。認知症によって、自身の財産を管理できなくなった人に代わり、信頼できる家族が財産管理を行うことが出来る制度で、従来の成年後見制度よりは柔軟に財産管理を行うことが出来るとされています。この制度も認知症発症してからでは遅いので、元気なうちに早めに対策を講じる必要があります
節税対策
相続税は高率な税が課されるので、出来るならば相続する親族の人たちが相続財産を有効に活用するため有効な節税策によって、少しでも負担を軽くすることが出来れば、これに越したことはないでしょう。
主な節税対策を挙げてみます。
- 年間110万円まで税金がかからない暦年贈与をする。相続税がかかることが明白な人は、贈与税を払っても生前に贈与した方がトータルでは負担は軽くなります。
- 相続時精算課税制度で贈与する。従来の相続時精算課税制度では節税効果はほとんど期待できませんでしたが、令和6年1月1日からスタートした新しい制度では、大きな節税策が組み込まれています。
- 相続税の軽減対象となる生命保険を契約する。
- 不動産を活用する。不動産購入の借入金は、相続財産から差し引けること、また不動産は時価ではなく、路線価や固定資産評価額で算定されるので、価格圧縮効果があるとことです。
- 親子で同居する。宅地価格が80%も減額される「小規模宅地特例制度」を活用できる可能性があります。
- 墓地や仏具などを生前に購入して相続財産を減らす。ただし、金の仏像など投資目的と考えられるものは対象外とされます。
- 配偶者に居住用不動産を贈与する。婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に 配偶者控除の特例が受けられます。
- 養子縁組をする。
など
また、二次相続を考慮して遺産分割を行うことが必要です。例えば、一次相続で、配偶者の相続税額減額措置により相続税がかからないことから、配偶者に財産を渡しすぎると二次相続で相続税が高額化する場合があります。様々な相続割合の組み合わせでシミュレーションを行い、トータルで後の世代の税負担が軽くなる相続パターンを検討して相続に備えるべきでです。
最後に、俗にタンス預金といってどこかに現金を隠し持っていて、相続税申告に含めず相続税を免れようとする行為がありますが、何十年もかけて作ったタンス預金でさえ税務調査で発覚し、隠すことは出来ないと言われています。強固な国税総合管理システム(KSK)よって様々な角度から情報が管理されていることを念頭におく必要があります。
タンス預金をしているとそのお金がたとえクリーンなお金であっても、税務当局から疑いを持ってみられる可能性があります。
もし脱税が明らかになれば、課されるペナルティなど様々なリスクが一挙に発現してしまうため、デメリットが大きすぎると言えるでしょう。
以上、様々な節税策が考えられますが、いずれも専門家のアドバイスのもとに実施することをおすすめします。